
派遣のお仕事をスタートする際には必ず、「どんなお仕事をどのような働き方、時給でお願いするか」「困ったときには誰に相談するのか」など、働く上で大事なことが記載してある書面を、派遣会社から受け取ります。
それが、今回お話をする「就業条件明示書」です。
お仕事をする上での基本的な契約内容が書いてあるもので、お仕事スタート時や
契約更新時に派遣スタッフに提示することが決められている書類です。
派遣のお仕事を始めるにあたりとても大切な書類ですので、 今回は、細かく明示書の確認ポイントをお伝えしていきます。
特に、就業条件明示書でトラブルになりやすいのは「業務内容」「契約期間」「休日」です、これらのチェックポイントもあわせて解説していきたいと思います。
就業条件明示書に書かれている内容とは?
派遣会社から渡される就業条件明示書には、おおよそ以下の項目について記載があります。
ちなみに、記載事項については全て、労働基準法 で定められている内容です。
派遣スタッフの就業条件明示書に記載がある内容は以下の通りです。
1. 就業先名称(所属部署) | 2. 就業場所 | 3. 派遣期間 (契約期間) |
4. 就業曜日と休日 | 5. 就業時間 | 6. 賃金ならびに支払い方法 |
7. 業務内容 | 8. 派遣元責任者 | 9. 指揮命令者 |
10. 派遣先責任者 | 11. 苦情申し立て先 | 12. 利用できる福利厚生 |
13. 安全及び衛生 | 14. 契約解除の場合 | 15. 紛争防止措置 |
「難しそう~」とついつい適当に読み流してサインしてしまいがちですが、万が一、就業先で困ったことがあったりした場合に、明示書の内容によって自分が不利益を被る…といったケースもありますので、特に初回契約時の明示書は、これからお伝えするチェックポイントに沿って内容を確認していきましょう。
就業条件明示書のチェックポイント
では、順番に各項目のチェックポイントをお話ししていきます。
就業先名称 、就業場所
記載されている就業先の部署名や場所は、お仕事紹介時や実際職場見学で行ったところと同じでしょうか。
まれに、以下のようなケースがあります。 例えば、
- 初回契約の3ヶ月は研研修としてて、職場見学で行った場所と別の支店や指定の研修センターに通勤する
- 職場見学は本社で行ったが、実際の就業先は近隣のA支店である
- ○か月後に、就業場所が変わる(社屋の移転)
いずれのケースも、もし実際にそのような状況になるのであれば、事前に説明があるべき内容です。
派遣契約期間
契約期間については、お仕事紹介の段階で、
- 「今回は◯月◯日から2ヶ月の期期間限定の短期派遣です」
- 「契約更新予定のある長期派遣です」
といった形で説明を受けますが、明示書をもらったら、お仕事紹介で聞いていたことと明示書に記載されている内容が一致しているかを確認しましょう。
もし、事前に聞いていた契約期間やスタート日が、明示書に記載されている内容と異なる場合は、これも担当者に確認しましょう。
特に、長期派遣で契約更新がある場合には、何ヶ月ごとの更新なのかも合わせて確認しておくと安心です。
就業曜日と休日 就業時間
お仕事の曜日や時間帯も要チェックです。
例えば、平日週5日で9時~18時までのお仕事のつもりでいたら、但書きなどで、
- 「創業日の◯月◯日(土)は出社とする」
- 「第1、第3日曜日は出勤日とする」
- 「毎週◯曜日は朝礼のため8時出社」
といった例外の出勤日や時間が記載されているケースもあり得ます。
週休2日と書かれていたので、毎週土日が休みかと思っていたら、「完全週休二日制」ではないので、隔週の土日が休みだった、という失敗例もありがちですので注意しましょう。
賃金ならびに賃金支払い方法
お仕事紹介時に確認をした時給とは違った金額が記載されていないでしょうか?
また、お仕事紹介時に「交通費の支給あり」と聞いていた場合には、聞いたことが漏れなく記載されているかもチェックしましょう。
また、賃金の支払い方法についても、お仕事紹介時に例えば「月末締め、翌月25日払い」などと聞いていた場合、同じことがきちんと記載されているかを確認します。
業務内容
これも、事前に聞いていたものと相違ないか確認しましょう。
派遣業界では、面接(顔合わせ)で聞いていた内容とは、違う内容の仕事をさせられたというトラブルが起きがちです。この点は特に重点的に確認しておきましょう。
確認ポイントとしては以下のようなものが挙げられます。
- 例えば、「経理事務」の仕事と聞いていたのに、「来客時の対応」といった文言が追加されている
- 「入退者手続きのサポートなど」…「など」として想定されるお仕事にはどのようなものが含まれるか
- 電話対応や来客対応は苦手なので避けたい、と事前に申し出ていたのにそうした仕事が記載されている
気になることがあれば、これも遠慮なく派遣会社に申し出ましょう。
派遣元責任者
派遣元責任者は、派遣スタッフについての責任を負う、派遣会社の責任者が記載されています。
たいていは、派遣会社であなたのお仕事を担当してくれた営業担当の上司や、営業担当の名前が記載されています。
指揮命令者
「指揮命令者」とは、普段、派遣スタッフがお仕事の指示を受ける人を指します。
毎日のお仕事で「今日はこの仕事をしてください」「この仕事はこのやり方でお願いします」といった指示を出してくださる社員のことを指します。
基本的には、毎日の業務指示を出してくださる社員のお名前が書かれていますが、その社員の上司の名前が書かれていたり、職場見学時にお会いしなかった社員の名前が記載されていますケースがあります。
もし、派遣会社の担当者と一緒に明示書の確認ができるのであれば、「この方は、先日の職場見学でお会いした方ですか?」など、確認してみると安心ですね。
派遣先責任者
派遣先責任者は、指揮命令者に対しての責任者のお名前が書かれています。
たいていは、指揮命令者の上司に当たる方のお名前が書かれています。もし、指揮命令者の方とトラブルになった場合には、この派遣先責任者に相談をすることが出来ます。
苦情申し立て先
派遣スタッフの苦情についての対応を行う社員のお名前が記載されています。
この「苦情」とは派遣先で発生する様々なトラブル、例えば「課内に当たりのきつい方がいて困っている」といった人間関係のトラブルなども含みます。
ちなみに、指揮命令者と苦情申し立て先が同じ方であるパターンも多くあります。
ここでは、どなたが苦情申し立て先となっているのかを確認しておきましょう。場合によっては、自分がお仕事をしている場所とは別の本社や支店にいらっしゃる場合もあります。いざという時のために、苦情の申し立て先がどこにいる方なのかを知っておく事は大切です。
利用できる福利厚生
就業先で派遣スタッフが利用できる福利厚生施設やサービスについての記載があります。
例えば、「社員食堂」「休憩室」の利用などが記載されているケースがあります。
何も記載がない場合は、社員食堂や休憩室の有無、休憩時は他の派遣スタッフはどこで過ごしているのかを聞いてみてもよいかもしれません。
安全および衛生
就業先で派遣スタッフの皆さんが、安全に衛生的な環境でお仕事ができるように、派遣先がとる措置について書かれています。
「就業先社員と同じ条件とする」などの記載があるケースが多めです。
契約解除の場合
この項目には、もし派遣スタッフが契約を中途解除(契約期間中に派遣先から契約を解除されること)をされた場合に、派遣元が行う対応について記載されています。
「派遣先と連携して新たな就業機会の提供に努める」「休業手当を支払う」といったことが記載されています。
派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争防止措置
「派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争」とは何を指すかといいますと。
例えば、派遣スタッフが派遣先で高いパフォーマンスを示したので、派遣先企業が「派遣スタッフを辞めてうちの会社に入社しませんか?」といった提案をすることがあります。
派遣スタッフによっては(ケースバイケースですが)良いお話ではありますが、派遣元企業から見た場合、派遣スタッフを決められた契約期間で派遣先企業に派遣するビジネスで利益を得ていますので、派遣契約期間中にそうした「スタッフの引き抜き」を行うことが営業妨害、となってしまいます。
そうしたトラブルを防ぐために、派遣元と派遣先との間で、「派遣先は、派遣元に派遣スタッフを直接雇用(採用)したい旨を通知し、職業紹介または紹介予定派遣契約を締結する」といったルールをあらかじめ決めておく決まりです。
もし、就業条件明示書に気になることがあったら?
たくさんのチェックポイントがある明示書ですが、もし、内容に気になる点があった場合はどうしたらよいでしょうか。
気になる点があった時には落ち着いて、
1.どんな点が気になるのか?
例)業務内容について、お仕事紹介や職場見学の際に聞いていなかった業務が入っていること
2.その点について、ご自身がどう思っているか?
例) ・事前に聞いていなかった業務が明示書に入っているが、職場が教えてくださるのであれば、自分は対応してもよいと思っている。
例) ・明示書に入っている業務は自分が事前に派遣会社側に「苦手だから避けたい」と話していた業務のため、できればこの仕事を業務に入れないでほしい。
この2点を自分で整理したうえで、派遣会社の担当者に相談してみましょう。
派遣会社側は、派遣スタッフ側からのこのような申し出に対応しなければならないため、あなたが気持ちよく働けるように就業先に働きかけをしてくれるはずです。
お仕事スタートに際して「就業条件明示書」をもらわなかった場合
「あれ、お仕事を始めるときに明示書をもらわなかったも…?」という方もいらっしゃるかもしれません。
令和元年/2019年の4月から、スタッフ本人からの希望があった場合に限り、SNSやメールなど、スタッフ本人が画面を保存出来たり、印刷をして保存ができる形式での提示でも有効とするルールが出来ました。
そのため、メールなどでの定時がされているケースがあります。
ただし、それもスタッフ本人から希望があった場合のみで、基本的には紙(明示書)での提示がルールとなっているため、万が一、メールなども含め、紙でも明示書をもらっていない場合は、お仕事が始まる前に速やかに派遣会社に「明示書をもらっていません」と申し出ましょう。
まとめ
安全に、快適な派遣ライフを送るために大切な「就業条件明示書」についてお話をしてきましたがいかがだったでしょうか。
定期的に契約更新をしている方でも、毎回必ず、明示書の記載内容は確認しておきましょう。